地名で分かる軟弱地盤
地名は土地の履歴書
  科学的な手段に頼れない時代に、身近に自然を把握するための方便として考え出されたものが地名で、地名をを付けるとき、その土地の状況を考えて、覚えやすいようにしたのだと思われます。
 自然と共生していた人々は、いつ、どこで洪水や地滑りが起き、どこに住めば安全か、どこに作物を植えればよいか、といった適材適所に対する土地勘があったと考えられ、地名はその土地の履歴を凝縮した標語のような ものなのです。
 ところが、私たちはいつしか谷や湿地を埋め立てて住宅や工場を造り、ダムや堤防で水の動きをコントロールするようになりました。地名は適材適所だった暮らしの知恵でもあったのですが、テクノロジーによって地名は単なる記号となってしまったようです。
 しかし、そのテクノロジーによって生まれた人工地盤が安心できるものでない現在、適材適所の、この先人の知恵を私たちはもう一度思い出し、役立てる必要があると思われます。

水に関わる地名を探せ
 昔も今も大地は私たちに何らかのシグナルを発信しています。ちょっと気をつけて見れば、地名の由来となっている地形(高低など)や地質(硬軟など)が必ず潜んでいるはずです。
 建物にとって最悪なのは軟弱地盤ですから、まずは軟弱な土地というものを察知することが重要です。
 たとえばどんな地名かというと、軟弱地盤の原因となる水に関係した地名です。水分をたくさん含んでいるのが軟弱地盤ですから、水、川、海、池といった場所は重要なキーワードとなります。
 では、具体的にどんな地名があるか見ていくことにしましょう。

1.水域

 水域は水そのものですから、軟弱地盤の可能性は高いといえます。

水戸・清水・川口・川内・寝屋川・白河・河内・綾瀬・池袋・沼津・泉大津・湖西・海南・近江・八潮・浪速/水戸は水門、近江は大きな海の意味です。

2.水辺

 水域に隣接する海岸、河岸、水域に突き出た半島や島を表す地名。

横浜・浜松・灘・磯子・高砂・横須賀・新潟・江戸・松江・住之江・浦和・浦安・三浦・川崎・茅ヶ崎・尼崎・長崎・岸和田/須賀は砂州の意味を表わし、脇に砂浜がある場所が横須賀です。江は入り江、浦は比較的小さな湾のことです。

3.さんずいの地名

 水に関係ある漢字といえば「さんずい」のつく字がすぐに思いつくのではないでしょうか。

河・池・沼・海・沖・潮・汐・洗・浮・渋・清・淡滋・渡・滝/湘南、流山など。

4.地形的に低い場所

 小規模な谷が沢で、日本には無数にあります。また坂も無数にあり、坂の下は低地で水が下ってきて溜まりやすい場所です。 

越谷・渋谷・刈谷・藤沢・米沢・金沢・荻窪・大久保・溝口・深谷・浅草・大阪・赤坂/浅草は遠浅の沖合いに海草(海苔)が生えていたことが由来。

5.水田

 稲が植えられているのが水田。新しく開墾された新田のつく地名と合わせ多数あります。

秋田・成田・野田・町田・下田・磐田・田辺・梅田

6.港湾

津は船つき場のことで、港を指しています。

港区・新湊・木更津・沼津・魚津・大津・摂津・唐津

7.人工の構造物

堂頓堀・稲田堤・船橋・板橋・日本橋・豊橋・大綱

8.水辺の動物

 水辺で暮らす鳥や動物が地名として残っている場所。

鷺沼・鴨川・鶴見・舞鶴・鴻巣・亀有・蟹江・貝塚

9.水辺の植物

 葉の細い湿地性の植物が繁茂する場所。竹はイネ科の植物で、たえず水が供給される場所を好みます。

稲毛・稲城・井萩・井草・芦屋・菅谷・蒲田・蒲郡・蓮田・竹の塚・柳川など。

 以上は大まかに分類したものですが、皆さんの住んでいる地域でも、これらに属した地名があるのではないでしょうか。これから建築しようという場所が、水に関わる地名だったとしたら、地盤が軟弱であることを疑ってみるべきです。町内全体が低いわけではありませんが、調べてみる価値はありそうです。
 ちなみに、地盤のよい地名としては、山、丘、台、高、林などがあります。これは、水はけの良い高台であることが分かります。
 たまプラーザ、佐倉市ユーカリが丘、○○ニュータウンなど、最近では横文字の町名が付けられることも少なくないようですが、町の統廃合や住居表示化が進んでいる地域では、昔の地名(本来の地名)が分からないので、登記簿に記載されている地番(字地名)を見るとよいでしょう。古い地名は、地盤を知るための格好の材料を提供してくれるものなのです。