◆水に関わる地名を探せ
昔も今も大地は私たちに何らかのシグナルを発信しています。ちょっと気をつけて見れば、地名の由来となっている地形(高低など)や地質(硬軟など)が必ず潜んでいるはずです。
建物にとって最悪なのは軟弱地盤ですから、まずは軟弱な土地というものを察知することが重要です。
たとえばどんな地名かというと、軟弱地盤の原因となる水に関係した地名です。水分をたくさん含んでいるのが軟弱地盤ですから、水、川、海、池といった場所は重要なキーワードとなります。
では、具体的にどんな地名があるか見ていくことにしましょう。
1.水域
水域は水そのものですから、軟弱地盤の可能性は高いといえます。
水戸・清水・川口・川内・寝屋川・白河・河内・綾瀬・池袋・沼津・泉大津・湖西・海南・近江・八潮・浪速/水戸は水門、近江は大きな海の意味です。
2.水辺
水域に隣接する海岸、河岸、水域に突き出た半島や島を表す地名。
横浜・浜松・灘・磯子・高砂・横須賀・新潟・江戸・松江・住之江・浦和・浦安・三浦・川崎・茅ヶ崎・尼崎・長崎・岸和田/須賀は砂州の意味を表わし、脇に砂浜がある場所が横須賀です。江は入り江、浦は比較的小さな湾のことです。
3.さんずいの地名
水に関係ある漢字といえば「さんずい」のつく字がすぐに思いつくのではないでしょうか。
河・池・沼・海・沖・潮・汐・洗・浮・渋・清・淡滋・渡・滝/湘南、流山など。
4.地形的に低い場所
小規模な谷が沢で、日本には無数にあります。また坂も無数にあり、坂の下は低地で水が下ってきて溜まりやすい場所です。
越谷・渋谷・刈谷・藤沢・米沢・金沢・荻窪・大久保・溝口・深谷・浅草・大阪・赤坂/浅草は遠浅の沖合いに海草(海苔)が生えていたことが由来。
5.水田
稲が植えられているのが水田。新しく開墾された新田のつく地名と合わせ多数あります。
秋田・成田・野田・町田・下田・磐田・田辺・梅田
6.港湾
津は船つき場のことで、港を指しています。
港区・新湊・木更津・沼津・魚津・大津・摂津・唐津
7.人工の構造物
堂頓堀・稲田堤・船橋・板橋・日本橋・豊橋・大綱
8.水辺の動物
水辺で暮らす鳥や動物が地名として残っている場所。
鷺沼・鴨川・鶴見・舞鶴・鴻巣・亀有・蟹江・貝塚
9.水辺の植物
葉の細い湿地性の植物が繁茂する場所。竹はイネ科の植物で、たえず水が供給される場所を好みます。
稲毛・稲城・井萩・井草・芦屋・菅谷・蒲田・蒲郡・蓮田・竹の塚・柳川など。
以上は大まかに分類したものですが、皆さんの住んでいる地域でも、これらに属した地名があるのではないでしょうか。これから建築しようという場所が、水に関わる地名だったとしたら、地盤が軟弱であることを疑ってみるべきです。町内全体が低いわけではありませんが、調べてみる価値はありそうです。
ちなみに、地盤のよい地名としては、山、丘、台、高、林などがあります。これは、水はけの良い高台であることが分かります。
たまプラーザ、佐倉市ユーカリが丘、○○ニュータウンなど、最近では横文字の町名が付けられることも少なくないようですが、町の統廃合や住居表示化が進んでいる地域では、昔の地名(本来の地名)が分からないので、登記簿に記載されている地番(字地名)を見るとよいでしょう。古い地名は、地盤を知るための格好の材料を提供してくれるものなのです。